夕陽に染まるヨットハーバーの映像に哀愁のあるトランペットのBGMが流れる…。1970年から1980年代にかけて日本テレビで放送していた「水曜ロードショー」のオープニングです。40代以降の方は特に記憶にある方も多いでしょう。
先日、この曲、ニニ・ロッソの「水曜日の夜」を久しぶりに聴きました。これを聴くと先のオープニング映像も思い出されますが(水野晴郎氏の「いや~、映画って本当にいいもんですね」というお馴染みのセリフも思い浮かびます)同時に、その当時の自分のことが言葉で説明できない情感を伴って懐かしく思い出されます。(音楽は特にその時期の様々なことと密接に結びついて記憶されるようです)
昔のことを思い出すとき、当時の家族や飼っていたペットのこと、会っていた仲間、行っていたお店や場所、よくやっていたこと、充実してたことなど様々なことを思い出します。
しかし、過去を思い出すとき、それぞれの時代に色あせない良い思い出があるのと同時に、またそれぞれの時代に必ず学校や会社などで悩みや不満も抱えて毎日を過ごしていたことを思い出します。これは私だけではなく、多くの人が同じでしょう。
ですが、悩みは今振り返るとあまり記憶に残っていない。「この頃にも悩みがあった」ということは覚えているのですが、何に悩んでいたか忘れてしまったことが多い。人間の記憶は、過去のことを美化し、嫌なことや苦しいことは忘れやすいようにできているようです。
過去に思いを馳せると、自分の「古きよき時代」に浸れます。まるで悩みなどなく生きていたかのように楽しく充実していた時代のように感じます。では、実際にその当時は悩んでいた時間は少なく、充実していた時間が多かったのでしょうか。いや、そんなことはありません。実際はその逆で、楽しかったことや充実していた時間は、割り合い的には非常に少なかったのです。
そこから思うことは、実に時間が勿体無かったということです。悩みや問題は、無視できないことや困難なものもありますが、自分が気にさえしなければ何も問題にはならないことが多かったと思うのです。それでどれだけ楽しい時間を失ったことでしょうか。もっと多くの時間を充実したことに使えたし、もっと毎日を充実させられたのにと後悔の念が沸きます。そして、それだけ多くの時間を費やしたのに悩みの多くは今は覚えてないのです。
後悔したところで過去の時間は戻ってきません。せめてできることは、その教訓を現在の毎日に生かすことです。
過去のある時代を思い出す。今振り返るととても良い時代だったと思える。しかし、その当時は、今が輝いてた良い時代だと将来、振り返ることができる毎日を過ごせていると思っていたわけではありません。今と同じく、輝いているわけでもないごく普通の毎日だったのです。
今、過ごしている毎日も、特別な日々ではないと思っています。ですが、過去の時代を振り返るとそうであるように、何気なく過ごしているこの毎日も将来きっと、良かった時代と思って振り返るようになります。そのとき思い出すのは、現在の毎日の中の充実した時間のことです。そして今の悩みの多くは忘れてしまっています。
ですから今、悩んだり気にかけていることがあっても、将来、「あの当時、もっと充実できたはずだ。些細な悩みに多くの時間を費やして勿体無かった」と思うはずです。
過去の時代にあったそれぞれの「他愛ない悩み」も当時にすれば自分にとっては大きな問題で、簡単にいくものではないことも確かにあります。ですが前述した通り、自分にはどうすることもできないことや自分が気にさえしなければ問題にならないことにも多く囚われています。それらは時間の無駄です。
過去の時代を振り返り、当時の悩みを持った自分を客観的にみれば、今現在の悩みからも少しは解放される視点を持つことができます。そして、この先の時間を無駄にしないように、充実した時間の割り合いが少しでも多くなるように毎日を過ごしていくように心がけましょう。