字が綺麗な人、達筆な人は賢い?

みなさんはどのような字を書くでしょうか。私は「字が綺麗ですね」と言われたことも何度かありますが、それより「読みやすい字ですね」といわれたことが一番多くあります。人が読むものは、まず読みやすさが大事という考えから、読みやすく書くようにしています。(ちなみに、自分しか見ないメモなどの字は汚いです)

このように、字というのはその人の性格や考え方の一部を表す側面があります。字の形だけではなく、大きさや筆圧という面でもそれは出ます。大らかで外向的な性格であれば字も大きく、筆圧も強い。逆に大人しくて内向的であれば字も小さく筆圧も弱いという、凡そ比例した傾向になるものです。(実際、字による性格判断というのも世の中にはあります)

ですが、その人の印象と書く字にギャップを感じる場合があります。例えば、礼儀や態度、身だしなみがキチンとしている人が綺麗な字を書く。これは、その人の印象と字に一貫性があり、何ら違和感はありませんが、その人の性格や普段の行動からしても、とても丁寧な字を書くと思えない人が意外と達筆な字、綺麗な字を書くというケースが稀にあります。これはどういうことなのでしょうか。(*)

まず、字で性格傾向を知ることができるのは、練習をしたことのない人に限定されるという前提があります。綺麗な字のお手本に近づけるように練習をしてしまった人は、もう性格判断はできません。性格傾向が出るのは、飽くまで自然とそうなっている場合に限られます。

そこから考えられることは、ギャップがある人は大抵、整った字を書く練習をした人ということです。では、なぜ練習をしたのでしょうか?考えられるケースはいくつかあります。

整った字を書くのは礼儀作法と同じく、当たり前に習得したというのは一番多いケースだと思います。このような考えを持っている人も当然、多くいます。子供の頃に親に習わされて、それが身について当たり前になっている人もいるでしょう。

そして、動機の一つとしてありえるのが、綺麗な字を書くと賢く見られるという理由で字を練習した人です。

周囲から賢く見られたいと思ったとします。しかし、実際に賢くなるのは簡単なことではありません。ですが、字が達筆だと「実は意外と賢い」といった印象を簡単に持たせられるわけです。(実際、このギャップがその人の印象をガラッと変える効果があります。心理学用語で「ゲインロス効果」と言います)綺麗な字を習得するのも簡単ではないという意見もあるかもしれませんが、実際に賢くなるのに比べたらずっと手っ取り早い方法です。

これは何も字だけに限った話しではありません。例えば、会社の同僚で、誰にでも親切でやさしく、女性にも人気があるAさんがいたとしましょう。それをいつも密かに羨んでいたBさんは「Aさんとは全くタイプが違うから自分には無理だ」と考えていました。ですが、Aさんの話し方や女性への接し方などをつぶさに観察してコツを掴んで、同じようにやれば手っ取り早いと考えました。そうすれば、実際にやさしい性格になるという自分を変える努力などせずとも、欲しい結果を得られるわけです。

中身がそのようであるから、自然とそれが表に出る。それが普通ですが、人間だけが例外を作れるのです。動物と違い、人間は目に見える結果だけを真似ることができる。要は、中身が伴っていなくても上辺だけそれらしくすることはその気になれば誰でもできるということです。

しかし、中身が伴わず表面だけ真似たものは、一見それらしく見えても「仏像作って魂入れず」になるわけで、見る目のある人であれば上辺だけであることが簡単に見抜かれてしまいます。

前述のやさしい人を演じたBさんの例も、しばらくはそれで効果を感じて上手くいっていると思えるかもしれません。ですが、その人に関わることが多くなれば、すぐにボロが出ます。実際はそのような人ではないのですから。

普段やっていること、行動や言動が軽薄な印象があった人が達筆な字を書くと「意外としっかりした面があるのだな」と思ってしまいます。実はその通りで、内面は意外としっかりした面を持っているケースもあるかもしれません。ですが、それが表に出なければ持っていないのと一緒です。ですから「実は」などという考えは結局は無意味なのです。その人の本質は、やはり普段やっていること、行動や言動といったことが全てなのです。

字は綺麗に越したことはありません。字を綺麗に書く人は、人柄との一貫性がなければ批判するべきということは無く、それは別に良いことです。ですが、それで単純に「中身はキチンとした人」「実は賢い人」と単純に決め付けないようにしましょうということです。「実は」「中身は」などという考えに意味はないのですから。

* 実は一貫性があるが、自分がその人に偏見を持っていてギャップがあるように感じているというケースもありえます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする