「意志を貫く人」と「偏屈で融通が利かない人」という同一人物でも異なる解釈

インターネットを閲覧するためにブラウザを立ち上る際、Yahoo!やGoogleなどのポータルサイトをスタートページに設定している人というのは非常に多いと思います。(私もそうです)
ポータルサイトのトップページというのは大抵、ニューストピックス一覧があり、そこで今の主要なニュースが分かります。そこで大きな事件・事故などの第一報を知るということも多くあります。

あるとき、有名人の方が亡くなられた一報が掲載されました。そして翌日くらいにに「○○さん、意志を貫いた人生」と見出しが出ました。これを見て、私は違和感を感じました。私はその人物に対して、偏屈で好人物ではないという印象を抱いていたからです。このような例は実は一度ではなく、過去に何度もあります。

偏屈で意固地な人物のことを「意志を貫いている」とか「信念を持っている」など、都合のいい解釈はいくらでもできます。一方で、意志を貫いて、信念を持って生きている人を「意固地で偏屈な人」と見ることもあります。今回はこの「解釈の違い」というテーマから、どう自分を改善することに活かせばよいかについて書きたいと思います。

物事の特徴を示す概念は、表裏一体で成り立っています。例えば、「上」という概念は、「下」という相反する概念があって初めて成り立つもので、「上」だけが単独で存在することはありえません。

人の性格傾向に関しても同様で、その特徴は見方によって、良い概念と悪い概念でどちらからも解釈できます。「物静か」という性格の特徴はそれ自体、善し悪しがあるわけではありません。それを「冷静で落ち着きがある」と良い解釈もできれば「物事に消極的」と悪い解釈にもできるわけです。

自分の考え、態度を変えないというのを「偏屈で意固地な人」と取るか、「意志を貫いた、信念を曲げない人」と取るか。それはその人に対する印象が関わっていることが多くあります。その人に反感を持っていれば偏屈と、好印象を持っていれば信念を持った人と解釈しやすくなる傾向があるということです。(もちろん、特に好意や反感を持っていなくても、普段の行動や姿勢の顕著な傾向で周囲の人に凡そ同じ傾向の印象を与える人もいます)

では他人ではなく、自分の場合はどうでしょうか。我々は他人の性格傾向は悪く取ることが多くある一方、こと自分に関しては、欠点をも都合のいい解釈をしてしまう傾向があります。これは、心のバランスを崩さないようにしようとする心理作用であり、ある意味、自然なものです。人間の体には、ホメオスタシス(自己恒常性機能)というものがあり、例えば、暑くなれば毛穴が開いて発汗し、体温を下げようとし、寒くなれば毛穴が閉じて体温を逃がさないようにする。このようなバランスを保とうとする機能は体だけではなく、精神面にもあるということです。

コンプレックスを抱えたり自己評価が低いのは、生きていく上で足かせになってしまいます。自信を持つことは活力に繋がり、物事をうまく進める上での重要な要素ですが、自分の性格に対して悪い解釈ばかりしていたら、それも失うことになってしまいます。ですから、自分の性格傾向を良く解釈することも必要です。しかし、都合の良い過大解釈をするともうそこから成長は無くなります。今のままで充分と思えば、もう改善する必要がないからです。

例えば、自分の性格傾向が物静かで、他人から「若いのに落ち着いてるね」と褒められて、「今のままの自分で良いのだ」と自信を持っても良いのですが、そこから更に一歩進み、「でも消極的なところがあるからもっと積極的にならなくては」と逆の側面から見て改善していくようにするのが良い考え方だと思います。自分の性格傾向に対して良い側面から解釈し、尚且つ、反対の側面からも見て改善する余地もまだまだあると前向きに考えるのがベストです。

ここで急に冒頭の有名人が亡くなったニュースの話しに戻りまして、特に強い反感を持っていたりしなければ、亡くなってしまった人をわざわざ悪く言う人はいないもので、そこは美化するのが礼儀なのかもしれません。結婚披露宴のとき、新郎・新婦の生い立ちのビデオが上映されると、随分と有能で好人物であるかのような編集にしてあります。昔からよく知っている友人・知人からすると失笑もののビデオですが、亡くなった人の美化もそれに近いものかもしれません。

ですが、亡くなった人に対して批判をする(他人に発言をする)のは暗黙のタブーだとしても、自分がどう考えるか、どういう意見を持つかは自由です。もし、「それは欠点を美化している」と思えるのであれば、それで良いと思います。それはあなたの意見であり、自分の意見を持つことは良いことです。

肝心なことは、自分では「信念を持って意志を曲げない」と思い込んでいる自分の「美点」が実は他人からは「偏屈で融通が利かない」という「欠点」と見られてはいないか?と考え、欠点として見られていると仮定した場合、現在の自分の周りの人に対する態度で反感を持たれてしまう部分は何だろうか?物事に取り組む姿勢や行動が他人からどう見えているだろうか?と考え、自分を改善していくヒントにすることです。

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