欠点を自ら率先して直そう

前回の「「いい歳して」と言われることをしていないか自分を省みる」で、「年齢不相応なことをしていないか自分で省みて、改善することが大事」と書きました。それに近いことですが、今回は自分の欠点や苦手とすることを自ら改善することについて書きたいと思います。

自分の欠点を他人に指摘されたり、言われて直すのは嫌なものです。特に、怪訝そうに言われたりしては、気分よく行動できるわけがありません。(片付けが苦手で、散らかっている部屋を家族から強く言われて渋々、掃除をするといったことは日常でありがちなシーンです)ですが、自分から進んで行動を起こすことは言われてやるのに比べたらずっと気が楽です。

ただ、いくら自ら進んで実行しても、他人から言われるのが嫌だからという動機では受動的であり、やはりストレスは避けられません。不得意なことをやるのは、「元々良い部分も多く持っている自分が更に良くなる」と捉えれば良いのです。この動機であれば、人から言われたくないから自ら動くという受動的な状態から積極的な状態になれます。(これはポジティブ思考を上手に利用した好例です)

人にはそれぞれ生まれ持った性質から、得意なこと不得意なことがあります。「弱点を直そうとするな。得意なことを伸ばせ。それが優位性になる」という提言もよくあります。確かに元々、得意なことを更に伸ばすようにすれば、他人より秀でて優位性が生まれ、そこで文字通り優位な立場になることができますので、これは有益なアドバイスです。

ですが、優位性を持っていることと逆のこと、つまり不得意な部分を改善していくことによって、よりバランスのとれた優れた能力・人格を育むことができます。もちろん、優位性を伸ばすことはとても重要ですが、劣位部分を補うこともまた重要です。通常は、何か得意である分野があれば、それと相反する能力が必要とされる分野が不得意である傾向があります。

私自身の経験をお話ししますと、昔は複数の人たちの中で一緒に作業をする場合、とても消極的でした。進んで前に出ないタイプで、人の中に入ると大人しくなってしまう傾向がありました。また、複数のことを並行して行うのが苦手で「マルチタスク」の能力が必要とされる作業が不得意でした。それを他人から指摘されたことも何度かありました。

一方で、一人黙々と集中して作業をすることは得意でしたので、社内の一部の人としか関わらず、デスクワークで集中して作業するといった、「シングルタスク」の仕事ばかりをしていました。「マルチタスク」の作業が苦手で、社交性と外向性が低いことはコンプレックスになっていました。

あるとき、会社を辞めて職場を変えるときに、環境と人間が一新するタイミングを好機と捉え、これまでと必要とされる能力が違うタイプの職場を選びました。そして今度は、自ら率先して積極的に動き、社交性も無理なく発揮するようになろうと考え、その通りに実践しました。当然、急激に別人のようにはなれませんので、無理なく徐々にというペースで実践していきました。当初はやはり色々と苦慮しました。ですが、徐々にではありますが以前よりも社交性と外向性が育まれ、「マルチタスク」の作業も少しはマシになってきたと自覚できました。

その結果、入社数ヶ月後に「今度入った人は、一生懸命やってくれている」「良い人が入ったね」と周りからの評判だと、直属の上司に聞かされました。これは大変嬉しいことでした。ですが大事なのは、例え他人からの良い評価が無くても、自分で改善してきていると自覚でき、充実感が得られればそれで良いのです。

苦手なことというのは抵抗感もあり、ストレスが掛かることでもあります。いくら苦手を克服しようと意欲的になっても、例えば対人関係が苦手な人がいきなり営業職などをやれば精神に問題を引き起こす可能性があります。精神的な負荷が大きくなりすぎないように無理はせず、ゆっくりで良いからできるペースで徐々に改善していくことです。そして、やったこと、できたことに意義と充実感を持つように意識するのがコツです。

「文武両道」とは、勉学と運動の両面に秀でた人物に対して用いられる言葉ですが、同じように自分の弱い部分を改善していくことによって、能力や性格のバランスを良くしていければ、相乗効果によって優れた人間性を育む助けになります。そして、もう一点、苦手なことをわざわざ直そうとすることの有意義な理由は、人間性を向上させるということに喜びや価値を感じられる人間になっていくということです。正しい内向性を育むというのは優れた人格に成長していくための重要な要素です。

ともすれば、人は自分の欠点など認めたくないものです。欠点というのはコンプレックスでもあり、できればそれに関しては避けて通りたいことかもしれませんが、成長の意欲があり、人間性の向上ということに価値をおければ、欠点を進んで直すことは悦びと充実感の持てる行為にできます。

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