神経質で悩みやすい人、そういう繊細な人は大体において苦労症です。他の人だったら何とも思わないであろう出来事に囚われ、それが気になってずっと重い気分で過ごしてしまったりといった経験が多くあると思います。「なんと損な性格に生まれてきてしまったのか」「こんなことに囚われる自分が嫌になる」と思う人もいるかもしれませんが、考えや意識を少し違う方向へ向けていけば、その生まれつきの性質を変えずにむしろ普通の人より充実した人生が送れます。
「損な性格に生まれてきた」というのは、生まれつき悪い性質を持っているという考え方ですが、生まれ持った性質には本来、良いとか悪いというものはなく、特有の傾向があるだけです。神経質で悩みやすい人というのは、関心が外よりも自分の内面に向きやすく、感受性が強く、思慮深い傾向があるというだけのことであり、良い悪いはありません。
繊細な人は生来、感受性のレーダーが鋭く、普通の人より敏感に色々なものを感じ取ります。そして、内向性と思慮深さが重なり、様々な出来事や他人の態度、言葉を自分の事に関連づけて感じ取る。これが「気にする」「悩む」という結果につながりやすくなります。
しかし、その性質は立派な「才能」なのです。人より感受性が強く、繊細な感覚を持ち合わせているという、その生まれ持った特異な性質を生産性のあることに向けるようにし、能力を育むようにすればよいのです。文学、音楽、絵画など、その感性と能力を活かせる分野は沢山あります。また、このタイプの人は概して興味を持ったことに対して高い集中力を発揮できる人が多く、それによって興味ある分野の専門家になれる可能性も高いと思います。また、趣味の面においても自分の中で広く奥の深い世界を作り上げ、高いレベルに到達できる素質を持っています。
私も昔は人間関係に悩みやすく、会社へ行く前に「ステレオのボリュームみたいに感受性にツマミがあれば、音量を下げるように感度のレベルを落として出かけるのに」などと思ったものです。何でも敏感にキャッチするのが分かっていてもどうすることもできないと思っていました。
でもあるときこう思ったのです。
前述のように、ある日、会社へ行く前に「感受性を弱める薬があったらそれを服用したいくらいだ」と思ったことがありました。ですが、「もしあったとしても嫌なことだけに効くという都合の良いものはありえない。だから、それを服用したら嫌なことを感じなくなるのと同時に、良いことや喜びにつながるポジティブな面も感じる力が弱くなってしまう。そう思ったら飲むのをためらうだろう」と考えました。誰も「この薬を飲めば、色々と嫌な目に遭ってもそれを感じずに済みますよ。ですが、その代わり様々な良い出来事の嬉しさも感じなります」と聞いたら飲むのをためらうのではないでしょうか。嫌なことを感じない代わりに喜びや感動する気持ちまで奪われてしまう。
これに思い至ったときに、「嫌なことを感じることにだけ意識を向けているが、良いことを感じれる能力も普通の人より高いはずだ。だが、意識をそっちに向けていない。これは非常に勿体無いことだ。意識の方向を変えれば、逆にとても日々が充実するはずだ」と気がつくことができました。
肝心なことは、生まれ持った性質に良い悪いは無いが、何も意識しないとその性質が仇になりやすくなってしまうということです。その性質から恩恵を受けるには、目的を持ってうまく利用していく必要があります。それが意識せず自然にできる人もいますが、多くの人は皮肉にもその性質から恩恵よりも害を受けてしまっていると思います。
あなたは、せっかく多くの恩恵を与えてくれる素質を間違った方向へ向けているかもしれない。正しい方向へ向ければ、その素質は立派な才能として活かせる。そして、感受性が高く思慮深い性格の人は、充実した味わい深い人生を送れる可能性が高い人です。これはむしろ、平均的な人よりも恵まれた素質を持っているということです。
まずはその事実に気づき、考えを変え、人生が充実する有意義なことに感受性や思考のレーダーを向けるように意識していくことにしましょう。そして、自分のやることと自分自身に自信を持ちましょう。そうやって徐々に生活が充実してくれば「損な性格に生まれてきた」から「得な性格に生まれてきた」と実感できることでしょう。